108ボッ田

 ボッ田とは、山間地などに見られる小さな水田のことです。時代はさかのぼりますが、町内の本柿木に次のような伝承があります。
 昼食を済ませた老人夫婦と孫の3人が田のあぜで一休みしていました。ボッ田の数を数えるように祖父に言われた孫は、繰り返し何度も数えましたが、108あるはずのボッ田は107しかありませんでした。祖父も数えましたが間違ってはいませんでした。
 この様子をそばで眺めていた祖母は、笑みを浮かべながら昼食を運んできた米びつを指差しました。その下に小さなボッ田がありました。うそのような本当の話です。
 老夫婦の子孫でもあり、今でもその土地の所有者が地区内で暮らしています。108のボッ田の跡地は、見上げただけで足元がふらつき、立っているのが精一杯の急傾斜地です。
 こんなところに水田を作った昔の人々のお米に対する執着には驚くばかりです。稲作がわが国の風土に最も適していることと、主食としてお米に勝るものがないことを経験的に熟知していたからでしょう。
 今、町では108ボッ田が再現できないか研究しています。飽食が当たり前になっている私たちにとって、昔にタイムスリップして、ボッ田の世界から現世を見てみるのも、ロマンがあって良いかもしれませんね。

ボッ田のイメージです。
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