吉奈の由来

 吉奈(よしな)の地名は、善名寺の寺号をとったものと伝えられ、元亀3(1572)年の善名寺由来記に「善名(よしな)村」、文禄4(1595)年の荒間帳に、「豆州狩野内吉奈村」となっています。
 なお、善名寺の名は、集古十種(しゅうこじゅっしゅ)所収の廃仏背銘(はいぶつはいめい)にみえる、「発願者伴善魚(はつがんしゃとものよしな)」によるもので、伊豆に配流された大納言伴善男(だいなごんとものよしお)の一族にかかわるとの説、本尊七仏薬師の中の善名(ぜんみょう)称吉称如来(しょうきちじょうにょらい)の善名からつけられたとする説があります。
 吉奈温泉の発見は伊豆の温泉の中で最もはやく、遠く奈良時代にさかのぼります。伝説によれば今からおよそ1280年前、行基菩薩の開発と伝えられています。おそらくそれ以前にも、岩の間や谷の窪みから自然に湧いていた温泉を、土を掘り石を並べて簡単な浴槽を作って、里人が入浴していたものと思われます。
 このように、古くからの温泉地であったため、江戸時代には、お万の方が入湯し、子宝に恵まれたことでも有名です。